前回の記事で認知行動療法の手順その1「自分がどういった場面で不安や緊張を感じるのか考える」という作業を行ってもらいました。

前回記事:>>【不安や緊張を和らげる方法】簡単にできる認知行動療法とは?


今回の記事では、手順その2に進んでいきたいと思います。

認知行動療法の手順 その2「暴露療法(エクスポージャー)」

認知行動療法は「認知の歪みを『行動』によって改善していく」といいましたが、手順1が認知の歪みについて考えるとしたら、手順2は行動を行っていくことになります。

そしてその行動こそが「暴露療法(エクスポージャー)」と呼ばれるものです。

※前回でもしつこくいいましたが、暴露療法(エクスポージャー)はストレスと向き合うものなので、うつ病の症状が出ている方は暴露療法は行わずにうつ病の症状を改善することを優先してください。

暴露療法(エクスポージャー)とは?

暴露療法(エクスポージャー)とは、
「不安や緊張を感じる場面に実際に1時間ほど身を置いて、不安や緊張が起きても大丈夫という認知の変化と慣れを生じさせる」
という精神療法となっています。


まず「自分は他人から変に思われている」などといった「間違った思い込み」を『実はそうでもないのでは?』ということを実感することが目的の一つとなりますです。

また、「逃げれば逃げるほど不安や緊張が増加する」という話もしましたが、暴露療法ではストレスから逃げずに向き合うので、回避行動をとって不安や緊張が強くなるという負のスパイラルから抜け出すこともできます。


不安や緊張から逃げたいと思う気持ちは自然なことです。

その本能が無ければ、人間はここまで生存できなかったでしょう。

しかし、現代社会において人間関係やコミュニケーションが重要視される状況では、対人関係を避けていると問題が多く生じてきます。


そしてなにより、逃げてばかりいるといつまでたっても不安や緊張は改善されないのです。


このように、暴露療法(エクスポージャー)は不安や緊張から逃げずに間違った認識を改善していくという、2つの問題点を見事に解決できる精神療法となっています。

暴露療法(エクスポージャー)のやり方

暴露療法(エクスポージャー)では、不安な場面にあえて身を置きます。

短時間では効果がないので、一定時間身を置く必要があり、目安としては1時間ほどと言われています。


不安や緊張は、実はピークは長続きしないことがわかっています。

ピーク時の苦痛自体はものすごく辛いものですが、ピーク時間は10~15分とされていて、徐々に場に慣れていきます。

このピークを乗り越えて不安や緊張が徐々に少しずつですが弱くなっていくのを実感することが重要です。


そして、なにより不安や緊張は発生しても「恐怖していたことや危険なことは実際にはそんなに起こらない」というのを実感するのも大切です。


例えば、「自分は他人から嫌われやすい」と思っている人の場合、相手が常にこちらに嫌悪感を向けているかというと、そんなことはないと気づくこともあると思います。

もちろん、場合によっては常に嫌悪感を向けている人もいるかもしれませんが、そういった場合でも「すべての人がそうではない」と認識することも重要です。


「上司に怒られるのが怖い」と思っている人でも、四六時中怒られているわけではないことにも気付けると思います。(例外はあるかもしれませんが)


このように、「不安や緊張を感じる場面にあえて身を置く」ことで、
・不安や緊張が起きても耐えることができる
・不安や緊張が起きても実際に怒られたり嫌われるというのはそれほど多いわけではない

といったように気づくことが暴露療法(エクスポージャー)の目的です。


暴露療法という「行動」を通して「認知」を改善していく「認知行動療法」というわけです。

暴露療法(エクスポージャー)のポイント・コツ

実際に不安な場面に身を置くことが暴露療法(エクスポージャー)といいましたが、この際のコツやポイントは2つあります。

暴露療法のコツ・ポイントその1「相手を観察する」

まず一つ目のコツ・ポイントが「相手を観察すること」です。

自分が相手と向き合っているとき、会話をしているときなどに、相手がどのような態度や表情をとっているのかよく観察してみましょう。


このとき「具体的」に「客観的」に観察することが重要です。

例えば、相手の目の動きや姿勢、体の動きといった部分に注意をむけます。


このときのコツとしては、自分が「相手はこう思っているのかな?」という『主観的な推測』はなるべくしないようにしましょう。


これを行うことで、「相手が常に威圧的な態度をとっているわけではない」「厳しい目つきを常にしているわけではない」といったようなことに気付けると思います。

相手の情報を客観的にみることで、「自分は変に思われている」「自分は嫌われている」といった思い込みがどの程度正しいのか間違っているのかを確かめることができます。


そして、問題点の一つ「自分にばかり注意が向く」というのも「相手を観察すること」で自然と解消していくのも良いところです。

暴露療法のコツ・ポイントその2「回避行動を変える(あえてやってみる)」

二つ目のコツ・ポイントが「回避行動を変える(あえてやってみる)」です。

回避行動の代表例として、
・相手の顔を見ないで下を向く
・小声で早口でしゃべる

といったものがあります。

自分が他人と会話をしているときにどういった回避行動をしているのかを考えてみましょう。

色々思い浮かぶかもしれませんが、ここではわかりやすくするために「一つ」に絞りましょう。

次の例からは「下を向いて話す」という回避行動を例としてお話していきます。


最初は「下を向いて話す」といった回避行動を『あえて』やってみましょう。

次に、回避行動(下を向いて話す)をやめて、相手の顔を見ながら話し相手の観察に移ります。



このとき、回避行動を取ったときと取っていないとき、どちらが不安や緊張をより強く生み出しているかを感じてみてください。

大抵の場合、どちらもあまり変わらなかったり、回避行動をとっていなときのほうが不安や緊張が和らいでいるのを実感できると思います。


また、同時に相手の態度も観察することで、どちらの時のほうが相手の反応が変わるのかにも注目しましょう。

これもまた、「意外と相手は自分のことを常に気にしているわけではない」といったことなどに気付けると思います。


相変わらず不安や緊張を感じている場合でも、このときも客観的に具体的な事実にだけ注目しましょう。

「手が震えている」「声が震えている」「体がこわばっている」など、はっきりとした事実だけを観察します。

そして、どの程度のレベルなのか、時間経過によってどれぐらい変わるのかなどを客観的に判断してみましょう。

暴露療法(エクスポージャー)を行っていくうえでの注意点

暴露療法(エクスポージャー)を行うのは、実際にはかなりストレスがかかります。

何度でもいいますが、うつ病の症状がひどいときや暴露療法の最中にうつ病の症状が出てきたときは、無理をせず中断しましょう。


また、最初は上司などストレスが強い場面から挑まずに、親しい知人などから始めてみましょう。

無理は禁物です。

暴露療法(エクスポージャー)がうまくいかなかったときは

不安や緊張を感じる場面に身を置くとき、最初は親しい知人から初めていき、次第に上司などの本命のストレス対象と向き合っていきます。

しかし、どうしても不安や緊張に耐えられず、逃げ出してしまい自己嫌悪をしてしまうこともあるかもしれません。

この場合は、
・まだ強い不安の前に出るには早かった
・計画に無理があった

などの可能性が考えられます。


例えば、「顔を見るのは緊張が強すぎた」などが考えられます。

この場合は、「顔を見るのは難しいから、おでこや鼻先をみるようにしよう」などといった改善案を思い浮かべましょう。

そうすることで、うまくいかなくても次に繋げることができます。


また、「やはり相手は自分を嫌っているに違いない」と思うこともあるかもしれません。

その場合でも「すべての人がそうではない」と考えたり「この人だけはどうしようもないのかもしれない、この人についてはあまり悩んでも仕方ないのかも」とか考えることもできます。


そもそも、暴露療法(エクスポージャー)はこういった「実際に行動を移すこと」自体に大きな意味があります。

そして「失敗経験を積み重ねる」こともまた大きな意味があります。(わざと失敗するわけではありません)



なぜなら、「自分はこれぐらいの不安までなら耐えられる」とか「これぐらいの緊張なら対処できることもある」といった経験を実感していくことが不安や緊張を和らげていくことにつながるからです。

暴露療法(エクスポージャー)のまとめ

さて、長々とお話ししてしまったので、ポイントをまとめましょう。

基本的なポイントは
・相手を観察する
・回避行動を変える(やってみる)

の2つです。

暴露療法をやるときにごちゃごちゃ考えてしまっても仕方ないので、とりあえずこの2つだけ意識するようにしましょう。


いろいろ考えるのは帰ってからでも十分です。

このときも「具体的に」「客観的に」判断するようにして、あまり長時間考えるのは疲れるし逆効果なのでやめましょう。


そして、回避行動を変えるには『相手の顔を見るようにする』というのがオススメです。

相手の顔を見るというのは、
・相手を観察する
・相手の話をちゃんと聞く姿勢になる
・小声で話してしまう(相手が聞き取りづらい)問題も解決しやすい

といったように、いろんな問題が同時に解決できるので非常にオススメです。


この際、相手の『目』を見るのは緊張が高まってしまうので顔全体を見るとか鼻先を見るとかにしても良いと思います。

また、じろじろとずっと顔を見るのは逆効果で相手に威圧感を与えることになるので、顔を見るのは3秒ぐらいで、顔を一回そらしてまた会話のポイントで再び顔を3秒ぐらい見る、というのを繰り返すのが良いと思います。


相手の顔を見ることで、相手が本当に自分を嫌っているのかどうかなどをしっかりと観察していきましょう。

それにより「常に自分のことを嫌っているわけではなさそう」「不安に思っていた危険なことはそうそう起きない」といったことに気づけると理想的です。


なお、なるべく不安や緊張を感じる場面から逃げないようにするのが目的ではありますが、それでも苦しみがひどいときは無理をしないようにしましょう。

うつ病の症状が出てきたり悪化してしまっては意味がありません。


以上、暴露療法(エクスポージャー)についての解説でした。

いかがでしたでしょうか。


さきほどの2つのポイントだけ抑えれば、実践自体は簡単にすぐにできます。

そして、私も実際に暴露療法をやってみて、
「意外と自分は嫌われたり変に思われているわけではないんだな」
と認識が変わり、不安や緊張が和らいでいるのを実感しています。



人によってはつらいかもしれませんが、うまくいけば不安や緊張を和らげることができるので、余裕がある方はぜひ挑戦してみてください。

前回記事:【不安や緊張を和らげる方法】簡単にできる認知行動療法とは?